喜びの庭 は、フランドルの画家ボッシュの最も象徴的で謎めいた作品です。 1490年から1500年頃に制作された、オーク材に油彩で描かれた三幅対で、閉じた状態では天地創造の3日目を描いた2枚のパネル、開いた状態では楽園、地上生活（喜びの園）、地獄を描いた内側の3枚のパネルが描かれています。

この作品は何のために作られたのか？ この作品にはどんな謎が隠されているのか？

リーフレット 地上の歓楽の園 のボッシュ、クローズド、オープン。

プラド美術館のアニメーション（詳細）。

閉じたリーフレットの説明

三幅対を閉じると、単色で浮き彫りのようなボリューム感を表現する絵画技法「グリザイユ」で天地創造の3日目を表現しています。 ボッシュの時代の基本文献である「創世記」によると、神は3日目に地球に植物を創造したとあり、画家は植物に満ちた地球を表現している。

ボッシュ：「天地創造の第三日」 トリプティークの前のパネル 地上の歓楽の園 .

技法：グリザイユ サイズ：各パネル220cm x 97cm。

しかし、不思議なことに、ボッシュは地球を水晶のような球体で包み込み、丸い世界のイメージを先取りしているのです。

神が上空（左上）から見守る、むしろ4日目の夜明けとも思える瞬間。 創造主である神は王冠をかぶり、手には開かれた本、つまりもうすぐ命を吹き込まれる経典を持っている。

左側には「Ipse dixit et facta sunt」、つまり「彼が言ったからすべてが作られた」、右側には「Ipse mandavit et creata sunt」、つまり「彼が命じたからすべてが作られた」と、詩篇148篇5節のラテン語の碑文が刻まれています。

オープントリプティックの説明

ボッシュ 喜びの庭 (オープン三連画）、オーク材に油彩、全体寸法：220 x 389 cm。

トリプティクスの全体を開くと、モノクロームで無機質な作品とは対照的な、爆発的な色彩と人物像に直面することになります。

このジェスチャー（作品の内面が明らかになること）に、まるでボッシュが世界の自然的・道徳的進化に加担しているかのような創造プロセスのメタファーを見る学者もいます。 各パネルの主な図像要素を見ていきましょう。

パラダイス（左図）

ボッシュ：「ザ・パラダイス」（の左パネル 地上の歓楽の園 ).

オーク材に油彩、220cmx97cm。

左側のパネルはパラダイスに相当し、創造主である神がイエスの特徴を持ち、手首を掴んで地面に横たわり、両端が重なるアダムにイブを引き渡す象徴として見ることができます。

アダムの左側には生命の木であるドラゴンの木があり、カナリア諸島、カーボベルデ、マデイラに自生する外来樹で、ボッシュはグラフィックの複製でしか知ることができませんでした。 この木はかつて、その紅い汁には治癒効果があると信じられ、生命と結びついていました。

右側の中央の帯には、善悪の知識の木があり、その周りを蛇が取り囲み、人型の横顔をした岩の上に横たわっていますが、これはおそらく隠れた悪の象徴と思われます。

岩の下には、水面から出現し、驚異的なフォルムを持つ爬虫類が次々と現れる。 これは種の進化という観点から理解できるのか。 専門家の間では、ボッシュは進化論の先取りを想像していたのではないか、という疑問も出ている。

右側パネルのディテール。 左はフクロウのいる泉、右は善悪の木である。

下は人間の特徴を持つ岩。 右下は爬虫類の進化を示す。

作品の中央には、エデンの4つの川を寓意した噴水が、生命の源と豊穣の象徴であるオベリスクのように空間を垂直に横切っています。 その底には、オリフィスを持つ球体があり、フクロウがその様子を静かに見つめています。 これは、最初から人間につきまとう悪で、その時を待っていたのです。を非難する。

泉と生命の樹の間、湖に浮かぶ白鳥の姿は、ボッシュが所属していた精神的な兄弟関係の象徴であり、したがって友愛のシンボルでもあります。

キリンやゾウなどのエキゾチックな動物、ユニコーンや海馬などのファンタジックな動物など、海、陸、空を飛ぶさまざまな動物が登場します。 多くの動物が戦っています。

ボッシュは、当時出版されていた獣図鑑や旅行記を通じて、多くの自然動物や神話上の動物について知っていたため、例えばイタリアの冒険家キリアクス・ダンコーナの日記に描かれているアフリカの動物の図像に接することができた。

歓楽の園（中央パネル）

ボッシュ 喜びの庭 (中央パネル)。

オーク材に油彩、220×195cm。

作品のタイトルにもなっている中央のパネルは、地上世界を表現したもので、今日では「地上の喜びの園」と象徴的に呼ばれている。

白黒の全裸の人々が何十人も描かれている。 登場人物たちは、あらゆる快楽、特に性的な快楽を楽しみながら、自分たちを待ち受ける運命に気づくことができない。 ある人物は観客を見、ある人物は果物を食べ、全体としてはみんな会話をしている。

画家の時代には、ヴィーナスやマルスといった神話上の人物や、もちろんアダムとイブなど、究極の目的が教えることである場合を除き、絵画に裸体を描くことは許されないことだったのです。

人体解剖学の研究に没頭したルネサンス期のやや寛容な雰囲気のおかげで、ボッシュは一般人の裸体を正面から描くことに抵抗はなかったが、もちろんそれを道徳的な行為として正当化している。

詳細：巨大なスケールで描かれた鳥たち。 左側はフクロウが観察している。

鳥や魚、哺乳類の巨大化、植物、特に果物の巨大化など、一般的な動物からエキゾチックな動物まで、その大きさは既知の現実と対照的です。

イチゴの木は、熱で発酵し、食べ過ぎると酔うことから、人を酔わせることができるとされた果物です。 他にも、イチゴ、ブラックベリー、チェリーが登場し、それぞれ誘惑と死、愛とエロを連想させます。 リンゴは、その象徴です。誘惑と罪

中央のプールを囲む、さまざまな動物に乗ったライダーたちのディテール。

この噴水は、5つの幻想的な作品を完成させるもので、その亀裂は、人間の喜びのはかなさを象徴しています。

中央の球体にひびが入り、人物がエロティックな行為に及んでいる状態のディテール。

大罪、特に欲望にまつわる大群をイメージしています。

地獄（右図）

ボッシュ：「インフェルノ」（の右側のパネル 喜びの庭 ).

オーク材に油彩、220cmx97cm。

地獄では、悪魔と同一視される中心人物の木人が際立っている。 地獄では、木人だけが視聴者の方を向いているようだ。

このセクションでは、歓楽の園で犯した罪の報いを受け、歓楽の園で楽しんだのと同じ要素で拷問されます。 ここでは、ボッシュは、賭博、不敬な音楽、欲望、強欲と欲望、偽善、アルコール中毒などを非難します。

拷問に使われる楽器が目立つことから、「音楽地獄」という通称で呼ばれています。

これは、中世に地獄の象徴的なイメージとして、永遠の炎や極寒の地など、さまざまなものがあったためです。

火災で焼けた部分の詳細。

凍った水とスケーターのディテール。

このように、地獄のコマの上部では、まるで戦争の場面のように、貶められた魂たちの上に複数の炎が吹き荒れる様子が描かれています。

ツリーマンのすぐ下には、凍った湖の上でスケーターたちが踊っている極寒のシーンがあり、そのうちの一人が冬の水の中に落ちて、必死に脱出しようとしている姿が描かれています。

作品分析：イマジネーションとファンタジー

1572年に出版されたボッシュの肖像画を描いたコルネリス・コートのエングレーヴィングには、ドミニクス・ランプソニウスのエピグラムがあり、おおよそ次のように訳されている：

"ジェロニムス・ボス、あなたの驚いた目は何を見ているのか、なぜあなたの顔は蒼白なのか、レムリアの亡霊やエレバスの空飛ぶ妖怪を見たのか？ あなたの前に、欲深い冥王星の門とタルタロスの住処が開いたように見える。あなたの巧みな手つきは、アヴェルヌスの秘密をすべて見事に描いている"。

ツリーマンの詳細

この言葉によって、ランプソニウスはヒエロニムス・ボスの作品を賞賛し、想像力の裏打ちが当時の表現規範を凌駕していることに驚きを表明した。 ヒエロニムスがこのような幻想的な人物を最初に想像したのか？ 彼の作品は一つの思考の結果なのか？ 誰もが彼と同じようにこの問題を考えたのか？ ヒエロニムスは何を意図してこの作品と出会ったのだろうか？の仕事ですか？

確かに、この三幅対を見たときにまず思い浮かぶのは、風刺や嘲笑といった要素で表現された想像力豊かで道徳的な性格です。 また、ボッシュは複数の幻想的な要素を用いており、それを「ファンタジー」と呼んでいます。 シュールレアリスト 夢や悪夢から抜け出したような姿です。

私たちが慣れ親しんでいるルネサンスの名画（優しい天使、聖人、オリンポスの神々、エリートの肖像、歴史画）を考えると、このような表現が目を引く。 このような人物を想像できたのは、ボッシュだけだったのだろうか。

ルネサンス期のイーゼル・ペインティングや大フレスコ画が、寓意的ではあっても幻想的ではない自然主義的な美学を追求していたのに対し、ボッシュの不思議な要素は15世紀から16世紀にかけての想像力に全く異質なものではなかったのです。

ボッシュは、図像学的な論考や版画、文学などを通じて、幻想的で怪奇的なイメージの糧を得ていたはずです。 では、ボッシュ、特に三幅対の独創性や重要性は何なのでしょう。 喜びの庭 ?

金持ちや強欲な者を苦しめるために再び現れるフクロウのディテール。

専門家によれば、ボッシュがフランドル・ルネッサンス絵画にもたらした革新的な貢献は、小芸術の幻想的な図像を、通常は典礼や信心深い信仰のために用いられるパネルに描かれた油絵の重要性にまで高めたことである、とされている。

しかし、風刺的、道徳的な意味で幻想的なイメージを紡ぎ出すだけでなく、想像の域を超えた作者の想像力が主役であり、ボッシュはある意味でシュルレアリスムといえる創作要素の礎を築いたといえます。

シュルレアリスム：特徴、主な作家」も参照。

ボッシュは伝統の中に身を置きながら、それを超越した独自のスタイルを確立し、ピーテル・ブリューゲル・ザ・エルダーなど後世の画家たちにも大きな影響を与えたのです。

作曲：伝統とこだわり

楽園の詳細：生命の樹のそばにいる神、アダム、イブのグループ。

この画家の作品は、視線をシーンの中心点に集中させるというルネサンスの原則をも破っています。

しかし、垂直と水平の空間構成は明らかであるが、各要素の階層は明確ではない。

特に、地上のコマと地獄のコマでいえば、それぞれ平穏と苦悩の合唱的な雰囲気を形成する、連結されつつも自律した複数のシーンを構築していることに注目したい。

中央のパネルでは、それぞれのシーンで、自分たちの世界、自分たちの世界を生きている人たちが集まっています。 彼らはお互いに会話をしていますが、数人の人物は観客に目を向けています。 彼らは会話の中に溶け込もうとしているのでしょうか。

トリプティックの目的・機能：カンバセーションピース？

詳細：グループでの会話やエロティックな行為。

プラド美術館では、トリプティクスの誕生5周年を記念して、専門家であるラインデルト・ファルケンブルクの協力を得て展覧会を開催しました。

ファルケンブルグは、この機会にトリプティクに関する論文を発表しました。 地上の歓楽の園 彼にとっては、この三枚絵は カンバセーションピース 研究者の解釈によれば、この作品は、確かに冥界（天国と地獄）の想像を暗示してはいるが、典礼的・献身的な機能のために考案されたものではない。

それどころか、この作品は宮廷で展示されることを意図していた。だからこそ、ファルケンブルグは、この作品の目的は、画家が非難したのとよく似た人生を歩んでいたかもしれない訪問者の間で会話を生み出すことにあったと主張する。

従来のトリプティクは、教会の祭壇に置かれ、厳粛な場面になると閉じられるもので、典礼の場では、会話は目的ではなく、信仰教育や個人の祈りと献身のためのものであった。

ファルケンブルクは、この三幅対を宮廷で展示するのは、外板を開いたときに生じる素晴らしい効果から、会話を目的としたものでしかないと考えています。

ファルケンブルグは、この作品では、彼もまた 鏡面文字 したがって、この作品は、社会環境で起こっていることの反映であることを目指しています。

画家の目的

豚にされた修道女のディテール、ボッシュは聖職者の腐敗を糾弾している。

これは、フランドルの画家のもう一つのオリジナリティであり、たとえ道徳的な意味で深いカトリックであっても、三幅対という形式に社会的な機能を持たせている。 これは、ボッシュの訓練と依頼の条件も反映している。 ボッシュは、豊かな想像力を持ちながらも保守的ともいえるエリート画家だった。 彼は、教養と知識を持った人物でもあった。文書化された、読み慣れた

聖母の友愛会のメンバーとして、また共同生活の兄弟たちの霊性の影響を受けながら、( キリストの模倣 ケンピスのトマス）、ボッシュはカトリックの道徳を深く追求し、預言者のように人間の矛盾や罪人の運命を指摘しようとしたのです。

ヒエロニムス・ボスの道徳観は甘ったるくなく、周囲を厳しく観察し、必要なときには教会的な偽善をも糾弾する。 そのため、16世紀末にエスコリアルのコレクションを管理していたヒエロニムス派のフレイ・ホセ・デ・シグエンサは、ボッシュの価値は現代の画家と比較して、次の点にあると述べています。 内助の功 が、他の人はほとんど姿を描かなかった。

ボッシュについて

コーネリス・コート：「ヒエロニムス・ボスの肖像」。 版画が出版されました。 ゲルマニアの劣等感からくる絵の数々 Dominicus Lampsoniusによるラテン語のエピグラム、アントワープ、1572年。

ボッシュの本名はイェロニムス・ファン・アケン、イェロニムス・ボッホまたはヒエロニムス・ボッホとも呼ばれる。 1450年頃、ブラバンテ公国（現在のオランダ）のヘルトゲンボッシュまたはボワ・ル・デュック（ボルドゥック）の町で生まれた。 画家の一家に育ち、フレミッシュルネッサンス絵画を代表する画家となる。

しかし、フィリップ2世がこの画家の絵画の大コレクターであったことは知られており、実際、フィリップ2世はこの画家に絵画を注文していたことが知られています。 最後の審判 .

ボッシュはヘルトーゲンボッシュの聖母友愛会に所属しており、罪、人生のはかなさ、人間の愚かさなど、カトリックの道徳的テーマに関心を持ったのは当然である。

委託先・送付先 喜びの庭 ナッソーの館からプラド美術館へ

エンゲルベルト2世とその甥のナッサウ家のヘンリー3世は、有名なナッサウ城を所有していたドイツの貴族で、画家と同じ兄弟団に属していた。 この作品を依頼したのは彼らのうちの誰かだと推測されるが、正確な制作時期が不明なので断定するのは難しい。

この作品は、最初の解説書が出版された1517年にはすでに存在していたことが知られています。 その頃、ヘンリー3世はこのトリプティクを所有しており、息子のシャロン家のヘンリーから受け継ぎ、さらに1544年に甥のオレンジ家のウィリアムから受け継いでいます。

1568年にスペインに没収された三幅対は、聖ヨハネ騎士団の修道士フェルナンド・デ・トレドが所有し、1591年に亡くなるまで保管していた。 フィリップ2世は競売でこれを手に入れ、エル・エスコリアルの修道院に運びました。 彼は自ら三幅対をこう呼びます。 苺の木の絵 .

18世紀には、この作品はカタログに掲載され 世界の創世記 19世紀末には、ビセンテ・ポレロがこう呼んだ。 肉体の快楽を描く そこから、表現の使い分け 地上の喜びの と、最後に、 喜びの庭 .

16世紀末からスペイン内戦の到来までエル・エスコリアルに保管されていたが、1939年にプラド美術館に移され、現在に至っている。

ボッシュのその他の作品

代表的な作品として、以下のものがあります：

• 祈りを捧げる聖ジェローム ゲント市立美術館 1485-1495年頃
• 聖アンソニーの誘惑 (断片）1500-1510年頃 カンザスシティ、ネルソン・アトキンス美術館。
• 聖アンソニーの誘惑の三部作 リスボン、国立アンティガ美術館 1500-1510年頃 リスボン、国立アンティガ美術館
• 瞑想中の洗礼者聖ヨハネ マドリード、ラサロ・ガルディアーノ財団、1490-1495年頃。
• パトモスの聖ヨハネ わ パッションストーリー (裏面） 1490年～1495年頃 ベルリン国立博物館蔵
• マギの礼拝 マドリード、プラド美術館 1490-1500年頃 マドリード、プラド美術館。
• エッチェホモ フランクフルト・アム・マイン、シュテーデル博物館、1475-1485年。
• 十字架を背負ったキリスト (裏面)です、 キリストの子 (裏面） 1490年～1510年頃 ウィーン美術史美術館蔵
• 最後の審判の三部作 ブルージュ、グローニンゲン・ミュージアム、1495-1505年頃。
• ヘイワゴン マドリード、プラド美術館 1510-1516年頃。
• 狂気の石の抽出 Madrid, Museo del Prado, Madrid, Museo del Prado, Authorship in question.
• 大罪の表 Madrid, Museo del Prado, Madrid, Museo del Prado, Authorship in question.

をテーマにした対談。 喜びの庭 プラド美術館にて

プラド美術館は、このトリプティクスの理解を深めるために、一連のオーディオビジュアル資料を公開しています。 喜びの庭 科学者と美術史の専門家の対談は、芸術作品の解釈の仕方に挑戦したい方には必見です。 きっと驚かれることでしょう：